ジャーナル



Wednesday, June 29, 2011

BDアスリート・ケイト・ラザフォードとブリタニー・グリフィス、 「ベンチュリ・エフェクト」(IV、5.12) -カリフォルニア・ハイシエラ、インクレディブルハルク壁-に挑戦

BDアスリート・ケイト・ラザフォード Kate Rutherford とブリタニー・グリフィス Brittany Griffith は、ハイシエラ、インクレディブルハルク壁の「ベンチュリ・エフェクト」に挑戦しました。「ベンチュリ・エフェクト」はハルク壁随一の攻撃的なラインで、スパイスの効いた5.11〜5.12のコーナークラックが、1,200フィートに渡って連続します。レッドポイントこそ果たせなかったものの、彼女たちは全力を尽くして心躍る手記を投稿してくれました。アンドリュー・バーの素晴らしい写真とともにお楽しみ下さい。


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皆さんは、クライミングツアーのアプローチで、荷物に生卵をぶちまけたことなんてあります?考えただけでもぞっとしますが、私たちは5日間のツアーの初っ端にそれをやってしまいました。今回ブリタニーと私は、ハイシエラの奥地といえども「デラックス」に過ごそうと決めていました。そして優雅な朝食には、有機卵は不可欠でした。私はカートン入りのパックをジャケットで包み、ヘルメットを被せてパック上部に完璧に仕舞いました。ところがツインレイクスの駐車場でちょっと目を離した隙に、ブリトニーが私のパックを倒してしまったのです。あまりのショックに、私は、何事も起こってない、卵も割れてない、と思い込むことにしました。venturi

それから四、五時間のハイクアップで、ハルク壁基部のビバークサイトに辿り着きます。壮大な岩壁の背後に日は傾き、ジャケットが欲しい気温になりました。恐る恐るパックを開くと、お気に入りのカオスハーネス、ジャケット、赤白ツートンのハットに、黄色いしみがぶちまけられているではないですか。汚れたソックスでしみを拭いながら、私のテンションはがた落ちです。venturi

夜の寒さは厳しく、朝は更に冷え込みました。早朝からトライを開始しましたが、爪先が凍えるばかりです。「ベンチュリ・エフェクト」は最も攻撃的なラインで、ヘッドウォールまで貫く壮大なコーナークラックが特長です。ブリトニーは最初の核心(5.12)を、ワルツを舞うような軽快なステミングでこなしました。venturi更に数ピッチを交互にこなすと、ようやく日が差して気温が上がってきました。いよいよヘッドウォールのフィンガークラック(5.12a)です。このピッチは最高で、存分に楽しみました。登り終えると私の全身は沸き立ち、足は痺れ、指はずたずたでした。もうくたくたです。venturi

ベストを尽くした私に代わって、ブリトニーが傾斜の強い5.12に挑みました。オーバーハングへと続く手強いクラックに翻弄されつつも、奮闘する姿に勇気づけられました。ところがスラブセクションに突入した途端、彼女は墜落を喫してしまったのです。

「何、このスラブ!ホールドがちっとも無い!」
いつもポジティブなブリトニーが、この時ばかりはひどく悪態をついていました。

彼女はロワーダウンで降りてくると、スラブを見上げ、もう帰りたいとつぶやきました。私はもっともだと思い、そのピッチをクリーニングして、一旦敗退することに決めました。手強いアルパインルート、ベンチュリ・エフェクトを完登するには、今日は万全ではなかったのです。私たちには休息が必要でした。幸い日程には余裕があります。venturi

くたくたになってベースに戻った私たちは、翌日は高原のビーチでくつろいだり、ボルダリングに興じたり、ニジマスの住む清流に飛び込んだり、ゆっくりと身体を休めました。

二度目のトライは順調でした。引き続き、ブリトニーは3ピッチ目の核心を、私はヘッドウォールのフィンガークラックを担当。気温は高いものの、そよ風がベストコンディションを演出してくれました。venturiventuriventuriそしていよいよ「メネシス(宿敵)」たる8ピッチ目です。今度のブリトニーは、圧倒的なバルジも手強いクラックも、スムーズにこなしているように見えます。例のスラブに差し掛かると、彼女は極小のフットホールドに乗り込み、向こう側のシンクラックへと腕を伸ばしました。息を凝らして見つめていると、いんちきなまでに長い腕で、シンクラックを掴んで乗り移りました。彼女はかって体験したことのない、凄いスメアリングをやってのけたのです。そこを越えるとビレイポイントは目前です。その時、彼女が宙に舞うのを目撃しました。なんと、ビレイポイントへ向かってダイノしたのです。

残念ながらダイノは失敗し、レッドポイントの夢は潰えました。

私はムーブを教わりながらフォローし、ダイノ無しでビレイポイントに辿りつきました。次のピッチも手強いので、時間の猶予はありませんでしたが、念のため、質問しました。

「今のピッチ、もう一度、トライしたい?」

「もういいわ、頂上に向かいましょう。」
こうして私たちは、夕暮れの太陽が待つ頂上へ向かったのです。

 

 

写真